来年は被爆六十周年を迎えます。しかしながら、不十分な核兵器削減、新型核兵器開発とその使用可能性、北朝鮮の核計画やイランの核疑惑など核不拡散体制上の重大な危機、インド、パキスタンの核兵器保有、イスラエルの核兵器保有の可能性など、核をめぐる状況はかつてないほど厳しい状況にあります。
紛争地域に属する国々の核保有は、ミサイル開発とも併せてさらに緊張を高めるのみならず、核の使用すら排除できない状況です。加えて、テロリストが大量破壊兵器を獲得するようなことになれば、未曽有の危機に直面することになります。こうした問題の解決に向けては、国際社会の一員として各国政府のみならず、非政府組織(NGO)を含むあらゆる機関、団体、個人の努力が必要です。
遅々として進まない核軍縮を前に、被爆者を含む広島、長崎の皆さんが、その悲惨な体験にもかかわらず、憎しみを超越し、世界中のすべての核兵器の廃絶を訴えてこられた勇気に深い敬意を表します。皆さんの努力により、「核兵器を二度と使ってはならない」という重い規範がこれまで守られてきました。
私は、広島、長崎への原爆投下は、ぬぐい難い人類史上の汚点であると考えています。
「広島世界平和ミッション」が、各地を訪れ、被爆の実相を伝え、関係者と率直な意見交換を行なうことにより、人類共通の課題として、「核兵器は二度と使ってはならない」「核の廃絶につながる実質的な削減が必要」との認識が共有されることを願っています。そして、そのための努力が継続、強化されることを心から期待します。
【写真説明】石栗勉さん 国連アジア太平洋平和軍縮センター所長(55)
   
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